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東京地方裁判所 昭和30年(行モ)25号 決定 1955年12月09日

右申立人は当裁判所に、相手方が昭和三十年六月十一日為した申立人に対する退去強制令書の発付処分が違法であるとしてその取消の訴(昭和三十年(行)第一〇〇号事件)を提起し、且つ右退去強制令書の執行の停止を申立てたので、当裁判所は相手方の意見をきいたうえ判断するに、申立人の本案請求は入国審査官の原告が退去強制すべき者であるとの認定及び特別審理官の右認定に誤りがないとの判定に対し原告が為した異議申立に対し法務大臣が為した異議申立は理由がないとの裁決が違法であり右裁決にもとずいて相手方が為した退去強制令書の発付処分も違法であるとしてその取消を求めるものであつて、申立人の本訴請求は主張自体失当として認容し得られないものではなく、且つ申立人提出にかかる疏明によれば申立人の右主張事実が一応認められるところ、右退去強制令書の執行により本邦より退去を強制されることによつて申立人が償うことのできない損害を蒙ることは明らかである。

ところで相手方は退去強制令書の執行のうち出入国管理令第五十二条第五項にいう収容(護送を含む)の停止は、申立人の逃亡によつて将来退去強制の執行が不能となることが予想されるから許されないと主張するけれども何等その点についても疏明がないし、却つて申立人提出にかかる疏明方法によれば申立人が逃亡する虞があるとは認められない。

よつて申立人の右申立は理由があると認め次のとおり決定する。

申立人 石瑞桐

相手方 東京入国管理事務所長主任審査官

主文

相手方の昭和三十年六月十一日申立人に対して発した退去強制令書にもとずく執行を停止する。

(裁判官 飯山悦治 岩野徹 井関浩)

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